Daisuke Hira
Research/研究紹介
1.タンパク質の構造・機能解析
●窒素循環に関わる金属タンパク質
●ナノ粒子カプセルエンカプスリン
●糖鎖合成酵素
2.環境浄化プロセスの微生物叢解析
X線結晶解析・電子顕微鏡・分子動力学法等により、これらの構造・機能を研究しています。
研究機関や一般企業と共同し、
●窒素排水処理プロセス
●海面埋立浸出水調整池
環境浄化プロセスで働く微生物について、次世代シーケンサーによる網羅的解析を実施しています。
1.タンパク質の構造・機能解析
地球上の窒素循環の一部を担う「脱窒反応」や、「嫌気的アンモニア酸化(anammox)反応」に関わる酵素やタンパク質について、研究に取り組んできました。現在は、主に以下のようなタンパク質について、X線結晶解析・電子顕微鏡・分子動力学法等により、これらの構造・機能を研究しています。
(1)窒素循環に関わる金属タンパク質
嫌気性アンモニア酸化(anammox)は、亜硝酸とアンモニアから窒素ガスを生成する新奇な脱窒素反応です。熊本大・崇城大の研究グループが、日本で初めてanammox反応を行うanammox菌の集積培養に成功し、新奇のKSU-1株を発見しました(2002年)。2009年から研究グループに参加し、KSU-1株のゲノム解析やその金属タンパク質の研究を行ってきました。anammox反応機構の全貌解明に向けて、今後も研究を進めています。
(2)ナノ粒子エンカプスリン
準備中
(3)糖鎖合成酵素
準備中
2.環境浄化プロセスの微生物叢解析
人間活動により生じる工業・生活排水中には、有機物や窒素、リンなどが高濃度で含まれています。排水処理施設では、微生物を含む活性汚泥を用いた生物学的処理が広く用いられています。我々は、特に排水中の窒素化合物の濃度低減を効率的に行うことを目指し、研究に取り組んでいます。窒素化合物濃度の低減に関連する微生物の働きには、主に以下のようなものがあります。
アンモニア酸化反応:アンモニア酸化細菌(anmmonia oxidizing bacteria: AOB)と呼ばれる微生物が行います。
亜硝酸酸化反応:亜硝酸酸化細菌(nitrite oxidizing bacteria: NOB)と呼ばれる微生物が行います。
脱窒:脱窒細菌と呼ばれる微生物が行います。
嫌気性アンモニア酸化(anammox)反応:嫌気性アンモニア酸化細菌(anammox菌)と呼ばれる微生物が行います。
現在、研究機関や一般企業と共同し、活性汚泥や処理工程に含まれる上記の微生物や、微生物叢について次世代シーケンサーを用いて網羅的解析を実施しています。窒素化合物濃度を低減する微生物叢の情報を収集することが、将来的に効率の良い環境浄化プロセスの確立や管理につながると考えています。
※微生物叢解析手法
16S rRNA遺伝子を標的とし、微生物叢DNAから全構成微生物種の16S rRNAをPCRで一括増幅。得られた16Sアンプリコンをシーケンスし、得られた16S配列データから微生物叢情報を取得します。塩基配列情報の取得は次世代シーケンサーのMiSeqを用いて行い、得られた塩基配列情報は、MothurやQiime2などのデータ解析パイプラインを用いて微生物叢解析を行います。
(1)anammoxリアクタ、SNAPリアクタの汚泥の微生物叢解析
自然界に存在する微生物の99%以上は単離されておらず、anammox菌も単離株がありません。しかし、より多くのanammox菌を集積培養することで、その集積培養物(種汚泥)を用いてanammox反応が進む反応槽(リアクタ)を作ることができます。集積培養中の微生物叢解析を行い、anammox菌の存在割合や、共存する微生物との相関関係などを調べています。
また、独立栄養性の窒素変換経路である部分亜硝酸化反応とanammox反応を組み合わせた単一槽での窒素除去法 (Single nitration anammox process; SNAP)リアクタの微生物叢についても調べています。
●ネットワーク解析
(2)窒素排水処理プロセス
・下水処理施設の汚泥における微生物叢解析
生物学的処理を行っている下水処理施設の活性汚泥や、設置した担体上に付着する汚泥を経時的に採取し、水質や微生物叢の変化を見ています。活性汚泥の微生物叢の季節や経年変動や、担体上に付着しやすい微生物などの情報も蓄積しています。微生物叢と水質の関係なども明らかにしつつあり、これからの下水処理施設の効率的な運用に貢献できると考えています。
・様々な排水処理施設の汚泥の微生物叢解析
下水処理施設だけでなく、海面の廃棄物埋立処分場浸出水、ベトナムでの水処理システムなど、多くの排水処理に関わる汚泥中の微生物情報を蓄積している。これらの情報から、微生物同士の相関関係を見たり、水質を予測したりという検討を行ったりしています。